漱石かく言わざりき
『月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど』
一番好きな百人一首の句です。修辞法の技術の高さがどうというのはわからなくても、歌の内容が自分にしっくりきたので一番好きなのですが、もしかしたら自分が名月の季節に生まれたからかもしれませんし、この歌を詠んだ人の名前が高校時代に付き合っていた女の子の名前と同じだからかもしれません。漢字違うけど。
諸般の事情から最近は特に月のことを意識するようになってしまって、月にまつわる曲でプレイリストを作ってしまったりなどして。完全にヤバい人間です。恐縮です。ということで、もう月の季節ですし、月がテーマの曲の話、してもいいですか。します。
01 moon - サカナクション
最初はやっぱりoverture的な曲から始めたい。オタクなので。どの曲もどことなく夜を感じるのでサカナクションは好きです。ディレイがかったサウンドとミニマルな進行のなかの男女混成のコーラスが、眠れなくて深夜の散歩に出たときの、木々のざわめきとか遠くの国道を走る車の走行音とか、そういうもののように聴こえてゾクゾクしてきます。
02 今宵、月が見えずとも - ポルノグラフィティ
ご存知の通り推し被り殺しちゃうぞマン、いわゆる同担拒否なので共感性がめちゃくちゃ高い。同担拒否帝国の国歌。推し被り殺すマンなのに推しメンのこと好きになってくれと言い出すのは一見矛盾していますが、自分の同担拒否マインドには根底に「俺の知らない推しメンの話をするな」というのがあるので、つまり「俺の目の届く範囲で好きになる分にはいいよ」ということなのです。ジャイアニズム。
03 三日月と砂漠の花 - 秀吉
自分が知る中で一番声が綺麗なスリーピースバンドこと秀吉の爽やかで切ないガチ恋ソング(勝手に)。
『ここにいるよ ここにいるよ 何もできないけど
そこにいるよ そこにいるよ きっと届かないけど』
この記事の性質上、ガチ恋ソング臭い曲が並ぶわけで、あんまり語ってしまうと後日読み返して恥ずかしくなって即消すクソ記事が出来上がってしまうので、各自聴いて歌詞も読んで、思ったことを原稿用紙3枚でまとめて来週提出するように。
04 Moon is mine - the pillows
満月の夜にスキップしながら聴きたい曲No.1。山中さわお氏の歌詞は独特でかわいい。
『二人の時を増やせるなら ボクはドラキュラに噛まれたっていいぜ』ってめちゃくちゃ良くないですか…?このアルバムは時代的にも和製ブリットポップという感じですごく好きです。名盤です。
05 同じ月 - フジファブリック
故・志村正彦氏の頼りない声と情けない歌詞が優しすぎて泣けてくる。亡くなってもう10年も経つのか……めそめそうじうじしてたらダメだとわかっててもぐるぐる考えてしまって、そんな感じでぼんやりと一週間過ごしてしまって、わかる、わかりすぎる……別に思い出して切なくなる人とかいないけど……直近の元カノ結婚したけど……
狂気すら垣間見えるほどにワンフレーズを繰り返すピアノとギター、そして力強い8ビートがエモすぎる。心がジワーンとなる。
『明日には会える あなたに あなたに
変わってみせよう 孤独を食べて 開拓者に 開拓者に』
という歌詞といい、”新月=月が見えない”という情景といい、本当にめちゃくちゃ刺さるので推しメンに会いたくて仕方ないときによく聴いてます。週7くらい。サブスク解禁してくれスピッツ~~~~!!
07 two moons - toe
toeといえば流体のようなテレキャス+機械仕掛けのような変態的なドラム、というイメージが強いですが、これは2本のアコギがメイン。星の瞬きみたいなグロッケンの音とか、そのまま消えてしまいそうなハーモニクスとか、余韻を残すシンセの音とか、すべての音が幻想的すぎる。そして満を持して登場する変態ドラム。唐突な9拍子。からのカタルシス。toeの楽曲の中でもダントツで好きな曲です。
08 blue moon. - tipToe.
tipToe.というアイドルグループの楽曲。イントロの『月の光』と間奏でのアレンジ+ドラム、ピアノやシンセの使い方、ボーカルのエコーするような歌い方やハモりの綺麗さ等々、素晴らしいとしか言いようがない……月が照らす夜のプールに忍び込むというロマンティックな情景描写はもちろん、『月がきれいすぎるから』『君がきれいすぎるから』の対句のセンスも良すぎる……夜がテーマのアイドル楽曲でこれを超える曲は永劫出ないんじゃないかと思うほど好きです。
09 Stray moon - カミナリグモ
上野啓示氏の少年のような歌声とギターが優しすぎて涙が出てくる。歌詞も本当に優しくて泣いてしまう。ガチ恋系のやつです。これマジで泣きそうになってしまうので一周まわって苦手です。本当にいい曲。カミナリグモは優しくてかわいいポップロックが多いのでもっと売れてほしい。流行れ流行れ。頼む。
10 三日月 - くるり
恋愛としてでも人間としてでも、大好きな人のことを思い浮かべて、なんとなく優しい気持ちになることって誰でもたまにあると思うのですが、まさにそんな歌なのではないでしょうか。短い曲ですが、そういうちょっと暖かな気持ちと寂しい気持ちが織り交ざった感情がにじみ出てくるところがさすがだなあと思います。演歌っぽい和風のメロディも無意識下でノスタルジーを刺激してきます。中華料理をひたすらおいしそうに食べるだけという、全然関係なさそうで実は意味があるかもしれないMVも良き。
11 Fly In The Blue Moonlight - UNCHAIN
小気味いいカッティングとジャジーに跳ねるギターが気持ち良すぎる、これぞUNCHAIN。夜の散歩って「自分だけの世界」って感じがしてテンション上がりますよね。そういう歌詞ではないですけど、そんなウキウキな気分で真夜中に好きな子のとこに行きたいものです。
12 Electric light Moon light - capsule
中田ヤスタカのつくるお上品なエレクトロニカ大好きマンです。というかヤスタカサウンドはどれもだいたい大好きなのですが、特に2007~2010年頃の曲がツボですね。最近はトレンド的にもFuture Bassに寄り気味なのでちょっと寂しい感じがします。
13 DAVID BOWIE ON THE MOON - 七尾旅人
七尾旅人氏がずっとファンだったデヴィッド・ボウイが亡くなった翌日に作曲したという曲。無重力空間にいるみたいな独特の浮遊感がすごく心地よい。『携帯は大気圏外 君としか話したくない』のフレーズがめちゃくちゃ好きです。「天国に行った」じゃなくて「月に行った」というところに作者のセンスを感じますし、月を見て故人を偲ぶというのは趣があって素敵です。
14 MOONLIGHT - tofubeats
ドライブしながら聴いたら勝手に首動いちゃう系のネオシティポップ。クラブとか行かない日陰の人間なのでどんなもんか全然分かりませんけど、失恋の曲だからという以上にそこはかとない空虚さを感じるところも好きですね。日陰オタクなのでクラブのイメージは「酒」「ドラッグ」「ギャング」「ナンパされてついていったら猟奇殺人犯だった」です。完全に洋ドラの見過ぎです。
15 LAST DANCE - lyrical school
サビが天才すぎる。大サビの「moonlight」のコール&レスポンスも激エモい。ノリの良いヒップホップなのに儚げな音作りも好きです。ヒップホップアイドルとかいうチャラついたアイドルなんて全然趣味じゃないし最近流行ってるみたいだけど結局パリピ用でしょまったく興味ないな、と思っていたら全然好きな曲いっぱいあって今は普通に聴いてます。
16 Fourside Moonside - サイダーガール
ラストはサイダーガール!悲しげながらも月光ぐらいのささやかな希望を感じる良曲。
『何もない日々から 船を飛ばそう 月の果てまで
君の価値を知るのは他の誰でもない』
スピッツの『ハヤブサ』にも通じるものがあるメッセージ性のある曲で大好きです。嫌なことばかり思い出して寝付けないときはこれを聴きながら安らかに眠りたい。
ということで、月がテーマのプレイリストでした。変にモチベーションが上がってガチのセトリを組みました。本当はもっと入れたい曲があった……スピッツ『三日月ロック その3』、サニーデイサービス『PINK MOON』、People In The Box『月』、松任谷由実『14番目の月』、挫・人間『十月の月』……やっぱり月がテーマの曲は良いですね。
なかなかまとまった時間がとれなかったのもあって半月くらいかけて書きましたが、今日はちょうど中秋の名月ということで、たまには良い酒を飲みながら、良い音楽を聴きながら、月を眺めるというのも風流で良いのではないでしょうか。僕は夜勤ですけど―――。
そういえばブログの名前を変えました。
元ネタがわかる人がいたらうれしい。